子どもの本の選び方

子どもの本 店主コラム

毎年、幼馴染みのお子さんたちに絵本をプレゼントしています。
その絵本選びは悩ましくも幸福なひとときです。

まず候補に挙げるのは、自分が子どものころに読んで面白かった本、本が好きになったような本。
何十年ぶりかに探してひらくときは、懐かしくも新鮮な感覚です。
あのわくわく。スリル。ぬくもり。
当時の感情を思い起こしながら、今の子どもたちにとっても面白いかしら……という視点でページを繰ります。

すると。

たしかにお話のすじ自体には色褪せぬ魅力があるものですが、……現代の倫理観に照らすと、多分にNGな要素が散りばめられているのですよね。

性差別。容姿差別。年齢差別。人種差別。障害差別。セクハラ。パワハラ。

それが、いじわるなキャラの嫌がらせとしてならまだしも、中立的な地の文や善人の言動に、悪気もなく描かれていたりするわけです。

令和でこれはあかんやろ。

子どものころ読んだときは何とも思わなかったけれど……。
ふだん頭では平等を支持しているつもりの自分にも、無邪気な偏見が潜在意識に擦りこまれていたような気はします。

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能力や容姿をネタにした女性蔑視が男性政治家などの発言にたびたび上がるのも、それがあたりまえの中で育てられていれば納得です。
かつては絵本だって、そんな表現だらけなのですから。
昔話なんてひどいものです。

しかし現在は、映画『風と共に去りぬ』が黒人差別描写のため放映を議論される時代です。

一面では、古典には古典の良さがあるし、昭和の名作も忘れ去るには惜しい。
いっそ過去の歴史となれば客観的に捉えることもできましょう。
けれどもジェンダーや人権の意識が過渡期にある今、幼い子どもたちのために前時代の作品は、微妙に選びにくい。
ならば新しい作品から時代を超える一冊を見出すべきか……?

こうして毎年、本屋と図書館を何軒もめぐりながら、えんえん逡巡しております。

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折しもこの2024年2月、昭和と令和の常識の違いをコメディにしたドラマが放送されているようです。
未視聴なのですが、宮藤官九郎さん脚本の『不適切にもほどがある!』という作品だとか。

もしかしたら現代の子どもたちにとって、これからを生き抜く力をつけるには、古典の読書よりもドラマやディズニー最新映画のほうが、より “適切” なメディアなのでしょうか?

ともかく冒頭の写真にある大好きだった児童書は、不朽の名作だろうと思うのですが。


→考えた末に今回選んだ絵本の話はこちら

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