世界観を変える地図「ピーターズ・ワールドマップ」

世界観を変える地図、ピーターズ・ワールドマップ 旅道具

こちらのお席では、私が使って良かった旅の道具や、旅に関連する素敵なアイテムをご紹介します。

本日のおすすめは、ピーターズ・ワールドマップ

持ち運び用の旅道具ではありませんが、世界認識がひっくりかえるお気に入りの地図です。

 

ピーターズ・ワールドマップとは

ピーターズ・ワールドマップ
PETERS WORLD MAP

ピーターズ・ワールドマップは、私たちがふだん見慣れた世界地図とはまったく違う世界の姿を表しています。

一般によく使われているのは、1569年に地理学者ゲラルドゥス・メルカトルによって航海図として考案された、メルカトル図法の地図です。メルカトル図法は角度を正しく表した「正角図法」であり、航海の進路を定めるのに適しています。

しかし実は、面積や距離はまったく不正確なのです。

丸い地球を平面化するにあたって歪みが生じ、緯度が高くなるほど、北半球は横に大きく引き伸ばされてしまうからです。

その結果、実際よりもヨーロッパと北米は大きく、南米やアフリカは小さく描かれています。本当は、南米はヨーロッパの約2倍、アフリカは北米の約1.5倍の面積があるのですが。

大航海時代にヨーロッパの人々は、こうした地図を指針に海を渡り、アフリカや南米を植民地化していきました。

 

メルカトル図法の説明
ピーターズ・ワールドマップの下部にあるメルカトル図法の説明

 

ピーターズ・ワールドマップは、1974年にドイツの歴史学者アルノ・ピーターズによって発表された、「正積図法」の地図です。赤道から離れるほど歪みによって形がやや縦に伸びますが、面積は実際どおり正しく描かれています。

ご覧ください、アフリカや南米がこれほど巨大だったとは、驚きではないでしょうか? 
地球上で圧倒的な面積を占めていることが分かります。

黄色い部分がアフリカ、左の緑の部分が南北アメリカ
ピーターズ・ワールドマップの面積や縮尺の説明
面積や縮尺の説明

 

正積図法の地図自体は、ピーターズ以前からすでにいくつか存在していました。しかしピーターズ・マップの何よりユニークな点は、面積だけでなく、「すべての人々に対する公平」(fairness to all people)に基づく地図であることです。

たとえば、日本で出版される地図ならば日本が真ん中になるように、大抵は自分の国を中心に描くもの。ところがピーターズ・ワールドマップでは、アフリカ大陸が真ん中になっています。自国中心の観点ではなく、国を問わず公平な地図となるよう、人類誕生の地であるアフリカが中央に選ばれているそうです。

ピーターズ・ワールドマップは、色付けも特徴的です。カラフルな大陸が目を引く一方で、国ごとには、はっきりとは塗り分けられていません。隣国同士は同系色のグラデーションです。近づいて見れば国境線も分かりますが、遠目にはざっくりした地域としての存在感が印象的ですね。

これは国と国の分断よりも、つながりを意識してデザインされているためです。

なんだか頭の中にジョン・レノン&オノ・ヨーコの「イマジン」が流れてきました。

それにしても航海図であるメルカトルの地図は、面積が不正確にも関わらず、なぜ日常生活においてまでよく目にするのでしょうか?

 

地図から見える世界観

ピーターズ・ワールドマップ

 

私は地図が大好きです。自分が来た道を振り返り、これから行く道を考えながら、何度もくりかえし指でたどって、地名を読み込む。そのため旅した土地の地図は、すっかり頭の中に覚えこんでしまうほどにもなります。

そんなワクワクいっぱいの地図ですが、一面では、非常に政治的な道具でもありますね。

メルカトル図法が地図の代表のようになったのは、この地図が、西欧が世界を支配する時代にちょうどよく現れたからだ、とピーターズは指摘しています。西欧中心主義・帝国主義・植民地主義に基づく大航海時代の地図が使われ続けることで、南の国々を実際より小さく思わせ、西欧中心の見方が強化されてきた、とピーターズは考えました。

言われてみると、今も私たちが学校で習う世界史とは、ほとんどが西洋史ですよね。

1916年にドイツで生まれ、自民族中心主義のナチス政権下で過ごしたアルノ・ピーターズは、1967年頃からこの公平な世界地図を構想していたようです。

大航海時代以来500年続く西欧白人覇権に挑戦するようなピーターズ・マップは革新的で、発表当時、大きな論争を巻き起こしました。のちにピーターズ・マップに賛同して製作を担うOxford Cartographers Officeの製図家Terry Hardakerでさえ、第一印象では正直こう思ったと語っています。

 

なんだこの地図は。アフリカは変に長いし、北米は小さく縮んでるし、何か間違っている、こんな地図は好きじゃないな、私は使わないぞ!

Terry Hardaker, from Oxford Cartographers Office, in “Arno Peters: Radical Map, Remarkable Man” , ODTMaps.com, 2007

 

一部の学者たちは「彼は地図製作の専門家でもないくせに」「これまでの地図は客観的で科学的だが、彼の地図は政治的だ」と攻撃しました。(しかしこれまでの地図が政治的でなかったと言えるでしょうか?)

学者たちの批判や「こんな変な地図は売れないだろう」という出版人の予想にも関わらず、ピーターズ・マップは世界中で多くの人に喜んで受け入れられました。国連やバチカン、学校、団体、企業でも採用されました。人々は、現代にふさわしい公平な世界の地図を歓迎したのです。

 

我々に必要なのは新しい地図じゃない、新しい世界観なのだ。

We don’t need a new map; we need a new view of the world.

Arno Peters, in “Arno Peters: Radical Map, Remarkable Man”, ODTMaps.com, 2007

 

長年疑いもなく眺めていた世界地図ですが、メルカトルの地図を無意識に刷り込まれた我々の脳内認識では、知らず知らずのうちに16世紀の世界観が続いているようなものだったのかもしれません。

歴史上、人間はさまざまな地図をつくってきました。
その時代によって、地図は人々の視野と世界観の変化を象徴しているんですね。

 

 

ピーターズ・ワールドマップは世界各地で教育に取り入れられており、SDGs理解にも最適です。学習に用いる際は、ピーターズの地図を善いものと決めた見せ方よりも、この地図がどんな批判や論争を呼んだのか、支持者と反対者の意見に焦点を当てるのがおすすめです。たとえば、メルカトルの角度の正確さや、ピーターズの縦に間延びした形、国境と色の視認性など、それぞれの地図の長所・短所を含めた特徴を把握したいですね。

 

インテリアとしてもおしゃれな地図

PETERS WPRLD MAP
見た目がいいんです

 

私はかつてPeople Tree というフェアトレード・ショップでこれを見つけて、コンセプトはもちろん、綺麗なグラフィックにも一目惚れしました。それ以来、どこで暮らしてもいつも一緒に持ってまわり、新しい部屋の壁に飾っています。するとほんの一時の仮住まいであったとしても、たちまち「私の部屋」という雰囲気ができあがります。

ご覧のとおり、やさしい色彩と模様のような地名のアクセントが美しく、主張しすぎないデザインは、どんなインテリアにも馴染んでくれます。特に海の色が爽やかでいいんですよね。

しかもラミネート加工されていて、折れにくく、汚れにくいのが嬉しい。今はポスター用のフレームに入れていますが、むき出しのままテープで四隅を留めて飾っていたこともありました。

家に遊びに来るお客さん方からも好評で、「あの地図いいね」とよく言ってもらえます。すると、「いいでしょ!これはちょっと面白い地図でね、アフリカ大陸が大きくて真ん中にあってね…」と大喜びでドヤ顔のうんちくが始まるわけです笑
ちょっとしたアイスブレイク・トークのネタにもなりますね。
何より、好きな地図をひとつ飾るって、嬉しいものです。

 

サイズは60✕85cm。


Peters World Map (Early Learning Geography)

 

持ち運びに便利な折り畳み版もあるようです。


Peters World Map: Folded

お部屋のフォーカル・ポイントや、位置や旅先を確認する実用的な地図、地理・歴史、開発教育の学習素材にも、たいへんすてきで重宝な「ピーターズ・ワールドマップ」です。

参考:

NHK高校講座 地理 
https://www.nhk.or.jp/kokokoza/tv/chiri/archive/resume001.html

OXFORD CARTOGRAPHERS
https://www.oxfordcartographers.com/our-maps/peters-projection-map/

New internationalist
https://newint.org/features/2003/01/05/arno

Arno Peters: Radical Map, Remarkable Man. ODTMaps.com
https://www.youtube.com/watch?v=FXh3CuD8ycQ

 

 

 


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