贈りものに選んだ3冊の絵本

贈りもの絵本 旅人文庫

あれこれと慎重な検討を重ねた末、贈りものにする3冊の絵本をついに決めました。
差別表現などの問題がなく、こんなに自由で豊かな作品が見つかるものです。


『まほうの木』

アンドレイ・ウサチョフ(著)、イーゴリ・オレイニコフ(絵)、藤原潤子 (翻訳)


まほうの木

天の川のはての「わく星O(オー)」には、願いごとをなんでも叶えてくれる「まほうの木」があるんですって。
空とぶお城があったり、ふしぎな生きものがいたり、探検しがいのありそうな星です。

幻想的な、絵本らしい絵本で、老若男女問わず贈りものにぴったりではありませんか。
詩のような物語を紡ぐアンドレイ・ウサチョフは、ロシアで人気の作家だそうですが、日本ではこれが初めての翻訳本とのこと。
世界にはまだまだ知らないことがたくさんあります!
それなら宇宙だって知らないことだらけでしょう。
わく星Oも、本当にないとはかぎりません。

夢のような絵をえがくイーゴリ・オレイニコフは、美術学校へ行かずに画家になったのだそうです。
オレイニコフは、「考えや描き⽅を強制されることなく絵に取り組むことができたという意味で、教育を受けていないことには良い点もある」(※)と語っています。

翻訳者の藤原潤子さんはロシア文化研究者であり、神戸で翻訳絵本の出版社「かけはし出版」も立ち上げていらっしゃいますね。
この本の贈り先は神戸の幼馴染みなので、そんなところにも縁を感じました。

※出典:講演会「現代ロシアの芸術と絵本 ―国際アンデルセン賞作家イーゴリ・オレイニコフ⽒を迎えて」の開催について

 


『3びきのかわいいオオカミ』

ユージーン・トリビザス(著)、 ヘレン・オクセンバリー(絵)、こだま ともこ (翻訳)


3びきのかわいいオオカミ

「3びきのこぶた」のパロディ作品。
昔話でいつも悪者にされるオオカミですが、オオカミが悪いなんてだれが決めたんでしょう?
オオカミが主役だっていいじゃありませんか。
このお話では、オオカミたちがブタに襲われないよう家をつくります。

まずは絵本らしからぬブタの破壊力をお楽しみください。
以前どこかで芸人さんが話題にして、爆売れした本だそうです。

少しまじめな読み方をしますと、世界では今も各地で戦争をしています。
人間の戦争でも、敵に攻められないように、もっと守りを固めても、もっと強い武器で壊されます。
際限がありません。

このお話のように人間も、より強い防衛と攻撃をくりかえすより、花の香りで仲良くなれるのでは?
つまり、ソフトパワーが表現された作品ともいえそうです。

ちなみに、たまたまかもしれませんが、こちらのパロディは絵のテイストも本家と似ているんですよ(笑)。


三びきのこぶた

「3びきのこぶた」のパロディは、ほかにも『三びきのコブタのほんとうの話』という絵本が出ています。こちらは「3びきのこぶた」事件をオオカミ目線で語ったら……という展開。オオカミはオオカミなりに、生きているだけですからね。正義は立場によって変わります。



三びきのコブタのほんとうの話 (大型絵本)



『アイヌのむかしばなし ひまなこなべ』

萱野 茂(著)、 どい かや(絵)


アイヌのむかしばなし ひまなこなべ

一瞬なんのこっちゃと文節に迷うタイトルですが、暇な小鍋、ですね。

漫画『ゴールデンカムイ』でも昨今注目が高まっている、アイヌのお話。
個人的にはそれ以前に旅雑誌『あるくみるきく』でアイヌ文化に興味を持ったことから、2022年に北海道を訪ねまして、二風谷(にぶたに)の沙流川歴史館でこの絵本に出会いました。

萱野茂(かやの しげる)さんは、アイヌで初めて国会議員となり、アイヌ文化の継承に取り組んだ方です。歴史館の映像で拝見したところ、実に優しい目をした、穏やかな人物でした。

こちらの絵本は、どいかやさんの可愛らしいイラストで、子どもたちにも親しみやすそう。
紙面はアイヌ紋様のデザインに彩られています。
アイヌの暮らしのなかで服やうつわ、小刀などを美しく飾ってきた独特の紋様は、それぞれの形に意味があり、魔除けになるともいわれています。

桃太郎や浦島太郎だけでなく、アイヌの昔話にももっと触れられるといいなと思います。


幼馴染み家のお子さんたち、今年の絵本も喜んでくれたようです。
愉快なユーモア大好きな関西キッズだけに、オオカミのお話に大笑いだったとか。お姉さんと弟くんの明るい性格にあわせて選んだ甲斐がありました。

さて、来年はなにがいいかしら!





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