田舎暮らしの現実について聞いた話

店主コラム

環境の良いところで古民家をリノベーションして、ブックカフェをつくりたい。
と考えてここ数年、地方での物件購入を検討し、あちこち下見に行っています。
そんな折、地方出身・東京在住の女性から「まわりでも移住は最近人気だけど、やっぱり無理だといって帰ってくる人が多い」と聞きました。
下記にその談話をまとめてみます。

 


 

田舎暮らしに憧れて実際に地方移住した知り合いが何人もいるけど、たいてい都会に戻ってきている。旅行で気に入ったという土地や、おしゃれな別荘地に移住した人も、3ヶ月で「もう無理」と帰ってきた。

農業をやりたいという強い動機があった人は、今も田舎で暮らしている。農業とか一次産業に携わる目的がある人は、地元の人に教えてもらいながら居着きやすいのかもしれない。 明確な目的がなく「なんとなくのんびりしたい」という気持ちだと「こんなはずじゃなかった」と思うかも。

田舎暮らしをやめる理由のひとつは、交通が不便とか。車がないとどこにも行けない

お店や宿を開業したい人は、その地域に昔からいる同業者から競合とみなされて気まずくなるかも。たとえその地元のお店がもともと繁盛していなくても、別に商売に一生懸命なお店じゃなくても、なんとなくライバル視されて妙な噂を立てられたりすることが実際にあった。

段取りとしては、引っ越しの前に何度もその土地にかよって、住民とも顔見知りになって、むしろ常連として仲良くなったら、「実はお店やりたいんですよねえ」なんて話も出して、反応や相性を見てから、引っ越しや開業を決めるとよいかも。

田舎ではお茶や食事は家でするものだから、ちょっとカフェにお茶しに行く、という文化はあまりないと思う。「カフェでお茶」は都会の文化。だから観光地以外で、地元の人を相手にしたカフェの営業だと厳しいかも。

移住支援とか補助とかで行政が移住者の呼び込みに力を入れているからといって、地元の住民が歓迎しているとは限らない

田舎は先祖代々ずっとその土地で暮らしてきた住民がほとんどで、外から新しい人が引っ越してくることは基本的にない。新しい人が来るとしても、どこそこの息子さん、娘さんが帰ってきた、というくらい。息子さんのお嫁さんは東京から来たとなるとそのお嫁さんが「よそから来た人」という扱い。スーパーなんかで居合わせたら、ほらあの人、という目で見られるし、そのお嫁さんが愛想よく地域に溶け込もうとするタイプだと認められたら受け入れられるかもしれないけど、人付き合いに距離を保ちたいタイプだと、悪い噂を広められる。

プライバシーはない。ないよ。

人間関係は濃く近い。

自治会に入らないとゴミ捨てもできない。

地域によっては自分の名義でその土地に家を買うことも借りることもできない。ずっと民宿暮らしの人もいる。

古民家は本当に寒いし、虫やネズミは共存

地方といっても、仙台や福岡みたいな都市ならともかく、田舎暮らしは、「合う」「合わない」の相性が大きい。

 


 

お話した女性は、東京の原宿で働いています。都市と田舎の違いを知るだけに、夢見がちな移住希望者が危なっかしく見えるのでしょう。「別に東京が大好きで離れたくないというわけではないけれど」と言いつつ、「原宿の町はいいよね、誰がどんな格好をしていてもかまわない。年齢によって、何歳だからこうしなきゃ、とかの決めつけもない。いろんな人がいて、奇抜な外見で歩いていても文句を言われたりしない」とも語っておられました。

また、彼女は古い戸建てで育ったので、虫やネズミが家の中にいるのはあたりまえすぎて、目に前にいたからってもはやなんとも思わない、とのこと。Gも平気、Gなんて噛んだり刺したりもしないんだからあんなのくらい全然! と笑っておいででした。(つまり、もっと手強いのがいると……?)

近頃メディアでも田舎暮らしの甘くない現実を伝える記事をよく目にします。
しかし実際に、移住先で人気の地域出身かつ都会マインドを持った女性の口から直接伺う意見には、説得力がありました。

特に、移住者呼び込みに熱心な行政と地元住民との温度差は、あるだろうなあ、と。

プライバシーも、虫も、覚悟がいる。

軟弱者よ、貴様ごときが田舎の論理に順応できるかね?

と、自問自答しております。

タイトルとURLをコピーしました