社会人学生時代に「旅学」をテーマとした修士論文を提出後、「本にしましょう」というお話をいただいてから、かれこれ幾星霜……。
追加取材を重ねて2022年夏、ようやく出版に至った自著の紹介です。
表題の民俗学者・宮本常一のご子息である宮本千晴氏に、監修としてお名前を寄せていただきました。
貴重な旅人インタビュー満載。
「旅はええもんじゃ」と語った宮本常一は、昭和の日本各地を歩きまわり、旅の知見をもとに村々の生活向上に貢献した人物です。
その宮本常一に導かれ、1960~70年代頃、旅好きの若者たちが集まってきました。
時代は高度成長期、海外旅行は自由化したばかり。
未知の国への冒険に飛び出していく人。
近代化の裏で消えゆく日本の情景を訪ねる人。
萌える若者たちは、それぞれ好きな旅に歩き出しました。
そのアジトとなったのが、「日本観光文化研究所」、通称「観文研」と呼ばれる東京・秋葉原の片隅でした。
宮本常一、観文研……馴染みのない方も多いかと思いますが、要は「旅してまなぶ」という話です。
キーワードは、「あるく、みる、きく」。
本書では、現代でも応用できる「旅学」の実例を紹介しています。
目次はこんな感じ。
中身はこんな感じ。
「観文研は、宮本先生は、多様な価値観を認めたんです。それは生き方の多様性なんですね。バイオダイバーシティならぬ、“ライフダイバーシティ”なの。」(田口洋美)
いい言葉ですねえ。
第六章には、「一生旅を続ける方法」。
これこれ。気になるところです。
宮本常一や『あるくみるきく』を知っている方は懐かしく、知らない方は新しく、お楽しみいただけましたら幸いです。
ちょっと見てみたいけど……という方、お近くの図書館でリクエストしたら買っていただける可能性は高いので、お試しくださいね。
私が旅の研究を始めたきっかけには、海外に行かなくなったといわれる若い世代に、異国の町を歩く楽しさを伝えたい、そこで暮らす人々や風土に直に触れてほしい、それは世界の未来や平和を描くのに、きっと役立つから……という志がありました。
それから、こんな面白い旅を会社に入ったら休みがなくてできないなんて耐えられない! 一生旅を続けるにはどうしたらいいんだ! そうだ、旅はただの遊びじゃなくて、いろんな知見を得られる学びなんだ! 旅の重要性をうったえて、旅のためにがっつり休める社会をつくっていこう! という野望がありました。
休みをくれ。
長期の休みを。
そんな欲から、意外とまじめな本が生まれたものです。
取材を進めてみると旅論だけでなく、多彩な個性をどう伸ばして活かすかという教育論、人材育成論、組織論にも発展しました。
一風変わった熱き昭和の若者たちの旅学、どうぞ感じてみてください。