旅の雑誌『あるくみるきく』をご寄贈いただきました

あるくみるきく表紙 店主コラム

先ごろ、日本民俗建築学会の幹事長様より、旅の雑誌『あるくみるきく』を大量にご寄贈いただきました。
『あるくみるきく』の執筆者であった愛知淑徳大学T教授からのご紹介によって結ばれたご縁です。
あらためて御礼申し上げます。
誠にありがとうございました。

 
国内外さまざまな地域を歩いた若者たちのレポート
 

1967〜1988年に発行された月刊誌『あるくみるきく』(制作・日本観光文化研究所)は、旅行会社・近畿日本ツーリストのPR誌です。
ところが誌面にはまったく広告要素がなく、観光地のレジャーやグルメ情報もありません。
ひたすら地元住民の日々の暮らしぶりや、歴史、民俗、文化、地理などに踏みこんだ、学びに満ちた内容です。

しかも、旅行会社の社員でもなければ作家でもなかった、旅好きの若者たちに国内外を好きに歩かせて、生粋の感動と関心を本人に書かせるという編集方針でした。
修学旅行を広めた近畿日本ツーリストならではの鷹揚な教育誌、といえるかもしれません。

そのドキュメンタリー的な味わいや、探究心あふれる詳細なレポートは、ある種の旅人たちから強い共感を呼んできました。

 このうち国内旅の記事はいくつか抜粋され、2010年頃から農文協より『あるくみるきく双書 宮本常一とあるいた昭和の日本』全25巻となって復刊しています。
こちらもまた圧巻の再編で、読み応え抜群!

 

 

しかし原本は、発行時から一般の本屋さんには流通していなかったうえ、廃刊されて久しい現在では、さらに入手困難です。
『あるくみるきく』は、昭和の時代には珍しかった海外旅の記事や、ちょっとしたコラムも面白く、この雑誌の性格をよく表しているのですが、それらは原本でしか見られません。
古本がわずかに出まわってはいるものの、全号まとまって誰もが読めるところは、東京の国立国会図書館くらいでしょう。

私は『あるくみるきく』の同世代ではありませんが、修論の際に「旅学」というテーマであれこれ調べるうちに存在を知り、これぞ求めていた旅のメディアだ! と大ファンになった次第です。
そこから、当時の執筆者に連絡して会ってインタビューを重ね、『あるくみるきく』の魅力を語った一冊を出版することにもなりました。

もちろん私自身は『あるくみるきく』原本を所有していなかったため、国会図書館に通いつめて、館内のバカ高いコピー代を支払って必要箇所を何ページもコピーし、帰宅するとちまちまとファイルに綴じて、という作業を繰り返していたのです。
それが研究の中でめくったり入れ替えたりしているうちに、だいぶばらけてしまい……。
ときおりインタビュー相手の方から数冊いただけたのが、大変ありがたいことでした。

 
編集やデザインも若者たちが手がけていました

今回は、『あるくみるきく』全263号のうち、188冊ばかりをまとめて拝受いたしました。
持ち主・紹介者の方ともに、「ぜひ活用してほしい」との仰せ。

拙著を読んでくださった方からも、「それで、肝心の『あるくみるきく』の実物はどこで見られるのですか?」というお問い合わせをいただくことがあります。
そんな機会には颯爽とご案内できるよう、公共のため、教育のため、旅のため、広く役立てていきたい所存です。

 

『あるくみるきく』の詳細についてはこちらのページもどうぞ↓

 

『あるくみるきく』の旅学とその魅力を語った拙著はこちら↓

 

拙著の要約を知りたい方は、いただいた書評をご覧ください↓

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