愛知県・常滑(とこなめ)の古民家宿よもぎゲストハウスのお話、〈1〉に続き今回は、家具、雑貨、アートなど、インテリアに注目してみます。記事後半では、古民家の物件探しについて伺います!(取材:2022年10月・12月)
ぬくもりインテリアの秘密
オーナーのShotaさんは、必要なものがあればまずリサイクルショップに探しに行くそうで、キッチンにある1個20円のグラスや、可愛いくて一目惚れだったというトースターも、リサイクルショップで発見したとか。「タイマーがないからよく焦がしてるけどね」と笑いつつ、トースターは現役で活躍中です。
リサイクルショップ以外では多くが、ジモティーで見つけたか、もともとこの家に残されていたもの。古民家なので新品だと浮いて見えてしまうこともあり、なるべく古いものを好んでいるそうです。
また、知り合いの陶芸家さんからプレゼントされたコーヒーカップや、大家さんから譲られた石油ストーブも目に入ります。
呼吸するような曲線。
時を経たもの。
人の手が加わったもの。
どうやら、そのあたりが柔らかな空気をつくりあげているポイントのようですよ。
Shotaさんと、妻でアーティストのElisa(エリザ)さん、大工のマツダさんの感性がいい具合に馴染んだよもぎゲストハウスは、ゆるやかで、テイストを決めすぎないおおらかさを感じます。
写真でじっくりご覧ください。
古家具と古道具
建具はほかの場所にあったものを移動して、仕切りに使ったりしています。
彩りを加えるエリザさんのアート
経年の風合いに、新鮮な色味を添えるのはエリザさん手製のポップなアートです。このバランスね。
大工さんの遊び心と曲線使い
「なるべくカドのない家にしたかった」という大工のマツダさんは、糸鋸やサンダーであちこちに曲線加工を施しています。だから優しい感じがするんですね。
いただきものと掘り出しもの
床や壁の木材は、余り物を使わせてもらったり、訳あり品を安く入手したり、お金をかけないよう工夫したといいます。たとえばダイニングのカウンター材は、真っ黒になっていた上、耳の部分に無数の穴が空いていたので、材木屋さんでわずか2000円だったそう。表面をきれいに削ってあるため見た目まったく問題ありません。
緑の植物とドライフラワー
植物の飾り方もセンスありますが、Shotaさんいわく、古民家でグリーンを育てるのはちょっと難しいとか。光が足りないのと、寒さが課題のようです。
ご近所からいただいた枝物や、プレゼントのブーケなどは、ぶら下げてドライフラワーにしてあります。
灯りへのこだわり
照明は白熱球を望んでいたShotaさんですが、光熱費の面で現実的なLEDを採用しました。とはいえ暖色で白熱球に近い灯りを妥協してはいません。「夜の様子を見ないと分からないから」と電器屋さんに各種サンプルを持ってきてもらい、何度も取り替えて夜に点灯し、見過ぎて逆に分からなくなるほど試したのだとか。部屋って灯り次第でだいぶ変わりますものね!
古民家物件と出会うまで
さて、インテリアをこんなに楽しめる古民家ですが、空き家増加が社会問題だといわれるわりに、市場にはさほど出まわっていない現状があります。古くても風情ある建物に住みたい・使いたい人の需要はあると思うのですが……。Shotaさん流の古民家物件の探し方について教えていただきました。
Q:古民家は一般の不動産サイトにはあまり掲載されませんが、どんなふうに探しましたか?
A:Shotaさん(以下同):探し方は、歩いていて、空き家かなと思ったらGoogle Mapで住所を確認して、市役所で土地台帳を見させてもらいました。土地台帳に持ち主の名前と住所が書いてあるから、近所だったら訪ねて行ってピンポンして。遠かったら手紙を出して。そうやって3軒くらいに連絡しました。
不動産屋さんにも行ったけど、ほぼ門前払いでしたね。地元の不動産屋さんは大家さんとの強いつながりがあるから、素性の知れないよそ者には、なかなか情報を出したがらないんじゃないかな、という気がします。
今もゲストハウスの近くに自宅用の古民家を探していて、手紙の準備をしているところです。
(Q:知らない相手に突然手紙を書くのって緊張しそうですね。)
いやいや、そんなことないですよ(笑)。文面には気を使うけど、手紙を出すこと自体はサクッと。参考にした文例? ないですね。言葉遣いや手紙のマナーは調べるかもしれないけど、内容については、受け取った人が定型文みたいに感じるのはどうなんだろうと思うし。
文面に関しては、自分の思いを伝えるだけ。人柄が出ないとだめだと思う。必ず手書きにしています。字は人を表すというし、PCで打った文章だと使いまわせるから思いが伝わらないんじゃないかという気がして。間違えたら書き直しになるけど、それが大事なんじゃないかって。
手紙には、妻と子ども二人がいて常滑で家を探していること、ゲストハウスをやりたいこと、自分の状況をありのままに書いて、もしよければ家を内見させてほしいことだけを伝えます。いきなりいくらで買いたいとか借りたいとか、お金の話はしません。内見させてもらった結果、大掛かりな改修が必要だったりして手を出せない場合もありますしね。
反応としては、3軒中、返事がなかったのが1軒。もう1軒は直接訪ねたところ不在だったのでメモを置いておいたら電話をくれました。あと1軒は家主の方も持て余していたそうで活用してくれる人がいるならと前向きな連絡をくれて、内見させてもらえたけれど、改修がかなり必要であきらめました。
Q:クチコミや人づてに探すことはありますか?
A:常滑では古民家でお店をやっている人同士のつながりがあって、近所の情報が入ってくることもあります。まわりの人に家を探してると言っておくのが大事かも。
近くに古民家カフェを始めた人がいるんですけど、遠方の出身で、最初はよもぎゲストハウスに二週間くらい泊まりながら、知多半島を視野に古民家を探していましたよ。やっぱりこのゲストハウスは古民家だから興味あったみたいで、改修の話とかもしました。古民家にアンテナ張ってると何かしらつながってきますよね。常滑の古民家でカレー屋さんをやっている人や、レンタルスペースをやっている人とも仲良くなりました。
Q:いい古民家を見つけても、大家さんの許諾が得られない場合は?
そう、物件探しはうまくいくことばかりではなくて。以前別の町で、不動産屋にいい間取りの古い借家が出ていて、ほぼ住みたいって気持ちを決めてたんですけどね。交渉の途中で値段を上げてこられたんです。それで、かわりに壊れている部分の修繕はしてくれますかとか、ちなみにペットは飼えますか、とかの質問を不動産屋経由で聞いたら、大家さんが「そんな、ああだこうだ言う奴には住んでもらわんでええ」みたいな感じになっちゃって。
でも僕すごい住みたくて。また一筆手紙を書いて、大家さんに渡してもらうように不動産屋さんに預けて。渡してもらえたかどうかわからないけど、結局、だめになっちゃいました。悔しかったけど、まあ今は、そういう状況でもし住めたとしても、きっと何かとトラブルが起きてたかもしれないなあって思うようにしてます。誠心誠意やってもだめなら仕方がないし。
もし乗り気じゃない大家さんにアプローチするなら、空き家を壊すのってお金がかかるので、自分が住んで家賃を払っていくから最終的にそれを解体費としたらどうでしょう? っていう話を大家さんに持っていくのもありかもしれない。
Q:古民家物件の内見では、どんなことを重視していますか?
A:内見は、大工さんのまっちゃんに一緒に来てもらいました。一番に見るのは、屋根ですね。雨漏りしていないかどうかが重要です。雨漏りがあると家の中に水が入ってくる状態なので、湿気で柱へのダメージがあり得ます。
友達が住んでた古い借家では、雨漏りがしてきても、大家さんがお金を払って直すのを渋ったみたいで。もともと他人に貸す予定の家じゃなかったところ、住みたいという人が来て、別にいいよ、くらいの気持ちだから、費用をかけて直してまで住んでもらうつもりはないんでしょうね。
二番目は、梁と柱です。シロアリにやられていないかどうか。壁の中に隠れている柱も、壁をめくって確かめたほうがいいです。よもぎゲストハウスの家は以前、業者に駆除に入ってもらっていたそうだけど、それでもまたやられていたから、梁を取り替えました。だいたい5年に1回くらいの頻度で駆除を頼む感じらしいです。
Q:よもぎハウスの物件とはどのような出会いでしたか?
A:常滑の空き家バンクで見つけて、市役所に問い合わせたら、大家さんを紹介してもらったので、会いに行ったんです。大家さんは常滑出身の経営者の方で、この家の元の持ち主から買い取ったそうです。購入した後、元の持ち主の方の思い出を残すことができる有効な使い道を模索していたときに、僕が現れたんですね。大家さんに挨拶に行ってゲストハウスをやりたいことを告げると、面白そうだねと、いい感触をもらえて。そこで、時間をおいてから再度お願いしました。友達の大工さんと一緒に改修したいという話もして。
その結果、大家さんが手掛けているいろいろな事業の一つとして、このゲストハウス開業にも出資してくれることでまとまり、改修費も用意していただきました。僕がやりたいことやお金がない事情も汲み取ってくださって、とてもありがたい条件で契約させてもらえています。本当に優しい方で、話し合いでそういうことにしてもらえたのはすごく感謝していますね。
大家さんは、常滑が盛り上がったらいいなという気持ちで応援してくださってるんじゃないかと思います。電気や水道工事の業者さんも紹介してもらえました。
振り返ると今まで本当に、「人」ですね。人に恵まれているなと思います。
古民家物件は、ひときわ「人」による影響が大きいのかもしれませんね。
次回は、ゲストハウス開業と移住のお話に続きます!