【旅学ゼミ】異界をめぐる冒険 〜人文学的に解く旅の構造〜

旅学ゼミ

2025年10月25日、Threadsで出会った方々とともに、初めてのオンライン旅学ゼミを開催しました。

前半は「異界をめぐる冒険 〜人文学的に解く旅の構造〜」と題し、文化人類学や神話学のキーワードから旅を考える発表。後半は感想や考察を共有しあう時間となりました。

不慣れな運営だったにもかかわらず、参加者の方々の優しいお人柄に助けられて、あたたかい場としていただきました。
また、活発なコメントとリアクションにより大いに刺激をいただきましたこと、心より感謝申し上げます。

発表概要

発表者:halkof
タイトル:異界をめぐる冒険 〜人文学的に解く旅の構造〜

目次:
序章  旅学の始まり(自己紹介)
「知りたいことは現場へ行ってみないとわからない!」という思いから旅を始め、学びの効果を実感。やがて「旅ってなんだろう」という問いを抱き、大学へ入り直した経緯を紹介しました。

第一章 死と再生の旅
アルノルト・ファン・ヘネップ『通過儀礼』から、通過儀礼における死と再生のプロセスを紹介。通過儀礼の象徴としての旅、実際に通過儀礼として行われる巡礼や成長の旅について語りました。

第二章 誰でもない自分に戻る旅
ヴィクター・ターナー『儀礼の過程』から、通過儀礼では日常の社会と異なる状態が生じるという「コムニタス」論を紹介。旅の間にも、肩書きにとらわれない平等・匿名・無所有・素の自分自身に戻る、というコムニタスの特徴が見られること、こうしたコムニタスの場は人間社会に不可欠であることを説明しました。

第三章 冒険の旅
ジョーゼフ・キャンベル『千の顔をもつ英雄』から、古今東西の神話に見られる普遍的な旅、出発→冒険→勝利→帰還というパターンを紹介。これは通過儀礼の拡大版であり、現実の旅や人生にもあてはまるといいます。私たちは神話の英雄とともに、新しい自分、新しい生き方へと踏み出す旅に出るのだ、というキャンベルの見解をお伝えしました。

まとめ
「可愛い子には旅をさせよ」
人は旅をして大きくなっていくんだね〜。

【問いかけ】

あなたにとって、人生の境界を越えるような旅はありましたか?

あなたにとって、平等で心身が蘇るようなコムニタスはありますか?

あなたにとって、冒険の旅はありましたか?

参加した方々の感想

〈通過儀礼について〉

・「境界を越えていく旅で、人は生きながら何度も生まれ変わることができるのだなぁと思った」

・「生と死や人生は、輪廻転生の魂の旅といえるかもしれない」

・「自分にとってお産は旅であり、大冒険。赤ちゃんとの生活はコムニタスだった。親は子育ての中で社会との関わりが変わる。出産は赤ちゃんだけでなく親にとっても通過儀礼なのでは」

・「あの世とこの世はつながっている……。タイで看取りに出会ったとき『生まれ変わる』という言葉を聞いた。今考えると、生まれ変わったのは自分自身だったような気がする」

・「本を読むことも通過儀礼のような。これも精神的な旅なのだろうか」

・「本は心の旅路」

・「旅ができない間は、映画で旅をしていると思う」

〈コムニタスについて〉

・「カフェでの旅人たちの語らいはコムニタスだった。いろんな人がいて、いろんな話が聞けて面白い場所だった」

・「だから旅をすると自由なんだと思った。旅では刹那的な人間関係であることの安心感もあるなあと思う。『期待された自分』を保つ必要がない」

・「与論島へ一人旅で行ったとき、同じような方と大きな机を囲んでご飯を食べたり、海を見に行ったりした経験を思い出した。お互いがふだん何をしているかを気にせず盛り上がった。島を愛する同志的な気持ちを持ったのを覚えている」

・「コムニタスなら息抜きができる。ふりかえると、周りの人が私に対して抱くイメージとの差がつらかった時期に、特に海外へ行きたくなることが多かった。匿名性や全人格的な点が、さまざまな窮屈だったことから解き放ってくれたような感覚があった」

・「自分自身がコムニタスで在りたいと思って過ごしているんだな、と気づいた」

〈冒険の旅について〉

・「初めてモロッコに行ったとき、人生の境界を越えた気がした。1回目はツアーで、2回目はほぼ自力で行き、知らない土地で電車を乗り継いでいくのはとても勇気がいることだった。それをやり遂げられると経験値が上がった気がして、自信もついた。コンフォートゾーンを抜けた」

・「初めての一人旅、『深夜特急』に影響されて、神戸から上海へ船で渡り、中国からネパール、チベットを陸路で移動した経験を思い出した。一番の冒険だった」

・「国内各地に移住したり、インドを旅したりしてきた。楽しかったというより、絶望から立ち上がる道のりだった。自分の課題が残っているからその場所を訪れているのかも」

〈ゼミについて〉

・「なんとなく感じていたこと、今からしようとしていることについて、学術的な裏付けを知ることができた」

・「皆さんの考えや経験を伺えて良かった。多様な視点で考えて受けいれることが大切だと思った」

・「他の人の具体例によって、多面的に学べた」

・「双方向で活発な意見交換ができた」

・「日頃こんな視点での対話機会がなく新鮮だった」

・「コメントやリアクションがしやすく、参加された皆さんのお人柄も素敵だった」

・「レクチャー後のセッションも、質疑応答というより、オープンな対話の場という感じで盛り上がっていた。メンバーも旅好きの文化系で、ほど良くまとまっている印象を受けた」

その他多数……

こうした積極的な意見交換により、新鮮な視点や豊かな体験を教えていただきました。

また、話の発展で参加者の皆さんから「旅とフィールドワークの違いとは?」「旅先は何を動機に決めているか?」「観光による搾取や観光公害について」など、多様な問いも上がってきました。
今後の課題としたいと思います。

ありがとうございました!

参考文献



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